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遺産分割協議がどうしてもまとまらない場合、家庭裁判所の遺産分割調停を利用して解決を図ることができます。
相続税の申告には「被相続人が死亡したと知った日の翌日から10ヶ月以内」という期限があるため、調停が不成立となったら自動的に「審判」に移り、時間的にも金銭的にも負担が大きくなります。
この記事では、調停をスムーズに進めるための基礎知識や、調停を有利に進めるためのポイントを解説していきます。
これから調停を控えている人、相続時に遺産分割でもめそうだなという人はぜひご参考くださ
調停委員は、民間から選出された非常勤の裁判所職員です。
遺産分割調停などの家事調停では、一般的に男女1人ずつの2人が選任されます。
調停委員の年齢層は40歳以上70歳未満。
選任される条件としては、弁護士、司法書士、元裁判官、元裁判所職員、元銀行員、元公務員等、法的な知識を有する人、社会人として豊富な経験知識の持ち主が選ばれます。
となります。
基本的に原則に則り提案や判断がなされますが、調停委員も人なので、あまりにも印象がよくない人への対応はより厳格になされる可能性があります。
では、そもそも調停とは何なのかを振り返りつつ、調停委員に悪い印象を与えないためにどうすればいいのかを解説していきます。
被相続人が亡くなったら、遺産の分割について相続人間で話し合い分割方法を決定していきます。
この遺産分割がもめてスムーズに決定されない場合に、家庭裁判所の遺産分割調停という手続きを利用することができます。
遺産分割調停では、家事審判官(裁判官)と調停委員で組織される「調停委員会」が中立公正な立場で当事者である相続人の双方の言い分を平等に聞き、調整に努めます。
そして具体的な解決策を提案し、合意に向けた話し合いを進めていきます。
相続人全員が合意したら調停成立となり、遺産分割の話し合いは完了となります。
もし遺産分割調停で合意が得られない場合は、自動的に遺産分割審判へ移行します。
遺産分割調停を利用するメリットとデメリットは以下。
それぞれ解説していきます。
身内だけだとどうしても感情が先行してしまい、お互いに意地になってしまうことが多々あります。
しかし、中立公正な立場である第三者の調停委員が間に入ることで、書類上や状況を正しく踏まえた上で理性的に話し合いを進めることができ、落としどころを見つけていくきっかけを得ることができます。
調停委員が仲立ちをするため、話し合いを行う際は相手方と直接交渉する必要がなく、顔を合わせずに進めることができます。
同じ日に行いますが、裁判所ではそれぞれ別室で待機する形となります。
相続人間での話し合いはお互いの状況や感情が先行しがちですが、調停では民法に基づいた公正な判断がなされます。
その上でお互いが納得する方向に調整してくれますので、公平で円満な解決を目指すことができます。
訴訟などは公開して行われますが、調停は非公開となります。
調停委員には守秘義務があるため、誰がいつ調停を行ったなどが外部に知られることはなくプライバシーが守られるので、安心して手続きを進めていくことができます。
それぞれ解説していきます。
調停は、家庭裁判所に申立書を提出してから約1ヶ月先から2ヶ月以内で裁判所が指定します。中には電話連絡で予定調整をしてくれる裁判所もあります。
調停期日(調停が行われる日)はだいたい1か月に1回程度のペースで行われます。
回数に制限はありませんが、裁判所が公開している司法統計によると、調停期日の回数としては6~10回程度が一番多くなります。
期間としてはだいたい1年ほどですね。
しかし、相続税申告には期限があります。遺産分割がまとまらない場合でも、誰かが立て替えて相続税の申告と納税を行う必要があります。
調停を行うのは平日の日中のみのため、時間の確保や遠方に住んでいる場合は交通費の負担も重くなります。
手間や時間をかけても、必ずしも合意に至るわけではありません。
調停は公正中立な立場である調停委員を交えて「話し合い」を行う場であるため、どうしても当事者間の主張が折り合わない場合は調停不成立となります。
調停では、全員が納得する解決を模索する場であるため、自分一人の主張は通らない可能性があります。
一般的には、遺言や民法による法定相続分に従った決定を目指していくことになります。
調停の申立てをする場合、以下のいずれかの家庭裁判所へ行います。
申立てに必要な費用は次の2つです。
他に、弁護士に依頼する場合は弁護士費用もかかります。
弁護士費用等は、原則として依頼人が払います。相手方に請求することはできません。
他に、標準的な申立添付書類は次のものがあります。
参考:裁判所「遺産分割調停」
被相続人の戸籍謄本等により、相続人の範囲を確認します。
養子縁組や婚姻の無効を主張する場合は、先に家庭裁判所に人事訴訟を提起し有効・無効を確定させる必要があります。
遺言が存在するか、存在している場合には有効か無効かを確認します。
遺言により遺産分割先が決まっている場合は、調停を行う必要はありません。
遺産のすべての行き先が決まっている場合は遺産分割調停を申し立てることはできません。
被相続人の財産をすべて把握し、遺産目録を作成します。
預貯金はもちろん、タンス貯金など隠れた財産がないかも確認します。
土地の確認は、名寄帳(なよせちょう)を調べるのが有効です。必要な場合は役所に問い合わせてみてください。
ちなみに、調停委員会が遺産を探すことはありません。
遺産目録を作成したら、財産的評価を確認します。
土地などは時価となるため、必要な場合は遺産分割時にあらためて評価を行う必要があります。
ただし、土地の評価は依頼する会社や鑑定人により数百万の差が生じる可能性があるので相続人間でよく話し合うようにしましょう。
各相続人の法定相続分は「特別受益※1」や「寄与分※2」によって修正されることがあります。
調停委員が申立人・相手方双方から意見を聞き、相続人全員が合意する遺産の分割内容を提案します。
その内容に全員が合意すれば調停は完了となります。
【特別受益※1】
特別受益とは、「特定の相続人が、被相続人から婚姻、養子縁組のため、もしくは生計の資本として生前贈与や遺贈を受けているときの利益のこと」をいいます。
具体的には
などなど。
その場合に、さらに法定相続分の財産を受け取ると、その相続人だけ「もらいすぎ」になり他の相続人間で不公平になる可能性があるため、是正をすることになります。
【寄与分※2】
寄与分とは、「特定の相続人が、生前に被相続人の財産の維持や増加に対して特別に貢献したこと」をいいます。
例えば、被相続人の生前に同居していて無給で家事や介護を行っていた場合に、何のお世話もしていない他の相続人と同じ相続分しか受け取れないのは不公平になるため、その事情も加味して法定相続分以上に財産を取得することができます。
ただし、被相続人が「生前贈与は特別受益としない」という意思を明らかにしていた場合においては、特別受益として扱わないこととされています。
特別受益と寄与分については、法的知識がないと主張をすること自体が難しく、また証拠も用意する必要があるため、弁護士等の専門家に相談すると安心です。
調停にて提案された遺産分割方法について相続人全員が合意した場合、調停は完了となります。
調停にて相続人全員が合意した場合、裁判所が「調停調書」を作成します。
調停調書とは、判決と同様の効力のある書類のため、もしその後にやっぱり反対するという人がいても強制的に調停にて決定した内容を実行することができます。
調停はあくまでも両者の意見を聞いて調整を行うため、遺産分割内容に1人でも反対する人がいる場合は成立しません。
その場合は、自動的に「遺産分割審判」の手続に移行されます。
遺産分割審判では、法律に則り裁判官が遺産の分割方法を提案し決定します。
審判による決定には、もし反対の人がいても従わなければなりません。
審判中においても、もし当事者間の話し合いで合意がなされた場合には「調停調書」が作成されて完了となります。
審判では調停以上により詳しい証拠などを集めることになるため、時間やコストなど労力がさらにかかることになります。
そのため、審判で決めればいいや、ではなく、なるべく当事者間で合意できることが望ましいでしょう。
遺産分割調停の裁判所が遠方の場合
原則として、遺産分割調停は当事者が出頭することになっています。
しかし、遠方でどうしても参加できない相続人など、家庭裁判所が認める場合に限り、電話会議システム等による出頭が認められています。
遺産分割調停は、調停期日が決まっています。
遅刻・欠席したからといって必ずしも不利になるというわけではありませんが、自分の主張などを伝える機会を逃してしまいます。
特に特別受益や寄与分など、伝えたい事実がある場合には、無断で遅刻や欠席はしないように注意しましょう。
もしどうしても出席できない場合は、事前に裁判所に欠席する旨を伝えたり、事前に弁護士に依頼して代わりに出席してもらったりも検討するとよいでしょう。
遺産分割調停において、自分に有利に進めるために嘘や事実の誇張をしてしまう方がおられます。が、結論から言うとそのような行為は避けるべきでしょう。
調停では資料や事実に基づいた上で様々な提案がなされるため、嘘が発覚する可能性が高いです。
そして嘘が明らかになれば、調停後の審判においても不利になる恐れがあります。
調停においては、客観的な事実を基に公平な提案がなされます。
そのような場において感情的な主張ばかり繰り返すことは、なるべく避けるべきです。
調停委員も人ですから、あまりにも不誠実な対応をされると、気分を害してしまう恐れがあります。
また、調停においては感情面もある程度はくみ取ってくれる可能性がありますが、あまりにも話し合いが困難だと判断された場合は早期に調停が不成立になる可能性もあります。
1)法的根拠に基づいた主張をする
調停を有利に進めるためには、感情論だけではなく客観的な根拠がとても大切になります。事前に証拠を揃えておくことで、自身の伝えたい主張を伝えやすくなります。
審判においても法律的根拠は重要な指針となりますので、事前準備をしておくのは損になりません。
ただし、法律関連は専門知識がないと難しい分野でもありますので、その場合は弁護士など専門家に相談することを推奨します。
調停委員は中立公正な立場であるため、私的な感情では行動しないのが当然です。
しかし、あえて悪い印象を与えてしまうのは避けるべきでしょう。
調停から審判に進んだ際にも大切なポイントとなります。
遺産分割協議がまとまらずに調停・審判と進んでしまうと、予想以上に時間や労力、お金がかかる結果に繋がります。
相続は金額が大きくなりがちのためトラブルになるケースも多いですが、正しい知識のもと、冷静な話し合いを心掛けましょう。
また、相続税・贈与税などでお困りの場合は税理士にご相談ください。
当事務所では無料相談が可能です。
相続は生きているうちに何度も起こることではないため、いざその場面になったときにどうすればいいのか悩むケースが多く、私どもはお客さまに寄り添ったアドバイスをお約束いたします。
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