資本の変動手続きについて
会社法の施行後、「利益の資本組み入れ」を除いて、資本金、準備金及び剰余金の間の振替ができるようになりました。また、剰余金を、準備金へ組み入れることも認められています。
会社法では、純資産つまり「資本金」、「準備金」、「剰余金」の間での振替が、一定の手続きをとることを条件に、原則として自由に行えるようになりました。
会社法施行以前は、有償減資や有償減準備金によって、株主に金銭などを払い戻すと同時に、資本金や準備金を減額することが行われていました。施行後は、株主への金銭などの払い戻しはすべて剰余金の分配手続きに集約されました。そのため、たとえば有償減資を行う場合には、一度資本金から剰余金に振り替えて、そのうえあくまでも剰余金の分配という形式をとることになります。
計数変動のパタ−ン
会社法では、事業年度内の純資産の変動については、株主資本等変動計算書の作成が法務省令により要請されます。つまり「資本金」、「準備金」、「剰余金」間における取引でいわゆる計数変動手続きにあたります。
計数変動パタ−ンとしては「資本金」、「準備金」、「剰余金」間での取引のため、以下の6通りとなります。それぞれの概要は、次の通りです。
(1) 資本金→準備金
原則として株主総会(臨時総会でも可能です)の特別決議が必要となります。一定要件を満たす場合には、定時総会の普通決議でも可能です。
(2) 資本金→剰余金
前記と同様に、原則として株主総会(臨時総会でも可)の特別決議が必要となります。一定要件を満たす場合には、定時総会の普通決議でも可能です。
(3) 準備金→資本金
株主総会(臨時総会でも可)の普通決議により可能です。会社法施行以前は、取締役会決議で行われていました。ただし、準備金の資本金組み入れについては、資本準備金に限られており、利益準備金からの組み入れは禁止されています。
(4) 剰余金→資本金
株主総会(臨時総会でも可)の普通決議により可能です。会社法施行以前は、「利益の資本組入れ」は、利益処分の一形態として、定時総会決議が必要でした。ただし、剰余金の資本組み入れについては、その他資本剰余金に限られており、利益剰余金からの組み入れは禁止されています。
(5) 準備金→剰余金
株主総会(臨時総会でも可)の普通決議により可能です。株式の発行と同時に準備金を減少する場合で、減少後の準備金が減少前より大きいときには、取締役決定でも可能となります。
(6) 剰余金→準備金
株主総会(臨時総会でも可)の普通決議により可能です。会社法施行以前は、実行不可能な取引でした。つまり「利益の準備金の組み入れ」に相当していたためです。
また、剰余金の配当をする場合には、減少する剰余金の10%を資本準備金、または利益準備金として積み立てなければならないとされています。
株主資本等変動計算書
会社法の施行に伴い従来の利益処分(案)や利益処分計算書は廃止され、新たに株主資本等変動計算書が導入されました。
これまでは、利益処分や資本の変動は原則として定時株主総会だけで行うこととされていたため、定時株主総会のときに利益処分案として、株主の判断を仰いでいました。
会社法の施行により、利益処分については定時株主総会に限らず行うことができるようになりました。そのため、資本の部の変動を詳細に示す計算書が導入されたのです。これが、株主資本等変動計算書になります。